呼吸器外科

肺外科

  1)肺癌に対する低侵襲手術  
  完全胸腔鏡手術から胸腔鏡補助下手術まで、さまざまな形で胸腔鏡を用いて低侵襲手術の実現をめざしています。低肺機能患者から80歳を超える超高齢者まで低侵襲手術は可能です。特に、肺切除量を減じた縮小手術に力を入れており、肺癌の進行度に応じて胸腔鏡下肺部分切除、肺区域切除+リンパ節郭清、肺葉切除+リンパ節郭清などの術式を選択しています。胸腔鏡手術は小さな傷、少ない痛み、早い回復が特徴で、当科の得意分野です。最近では肺門部リンパ節転移のある肺癌や大きな腫瘍の肺癌にも適応されるようになっています。
 
  2 肺癌に対するロボット支援手術
  当院では平成228月内視鏡手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)を導入しました。その後トレーニングを重ねて認定証を取得した後、平成231月より肺癌に対するロボット支援手術を開始し、良好な結果を得ています。適応は大きさが3cmくらいまでのリンパ節転移のない肺癌です。ダ・ヴィンチの特徴は3Dカメラを有し、自由自在に動くロボット鉗子と手振れのない正確な操作です。問題は現在まだ保険適応がない手術ですので、詳細は当院の医療サービス課もしくは当科へ直接お問い合わせください。
 
  3)肺癌に対する拡大手術
  進行肺癌に対しては浸潤臓器の合併切除および再建を積極的に行っています。再建材料にも注意を払い、生体親和性、耐久性、感染抵抗性を重視し、成績向上に努めています。また、呼吸器内科や放射線科との診療連携により、術前補助療法(放射線、化学療法)を行い、進行癌においても根治性の高い治癒切除を重視しています。心大血管の合併切除が必要な場合は心臓血管外科と協力して手術を行っています。肺門部の肺癌に対しては気管支形成術も積極的に行っており、肺機能を温存し、かつ根治性の高い手術を行うように努めています。
 
  4)進行・再発肺癌に対する治療
  2名の日本臨床腫瘍学会暫定指導医、2名のがん治療認定医により、進行肺癌、再発肺癌に対して化学療法を積極的に行い、病状の軽減やQOLの改善に努め、手術適応があれば迅速な対応を図るようにしています。また、気道狭窄に対しては呼吸器内科や放射線科との共同診療により硬性気管支鏡を用いて、気管支鏡下レーザー治療やステント留置を行っています。
 
  5)転移性肺腫瘍に対する手術
  転移性肺腫瘍は手術が可能であるほど予後良好の傾向があり、胸腔鏡手術のよい適応です。診断目的の手術の場合もあります。一般的には原発巣がコントロールさていること、他臓器転移がないこと、肺転移個数が限られている場合がよい適応になります。転移性肺腫瘍は抗がん剤治療も重要ですが、手術は集学的治療の一環として積極的に行う方針にしています。
 
  6)気胸、血胸、胸膜炎、膿胸、良性肺腫瘍、良性肺疾患に対する治療
  良性の肺疾患は在院日数を短縮による早期社会復帰が原則であり、術前入院期間の短縮、低侵襲である胸腔鏡手術による患者負担の軽減を主眼においています。特に、気胸、血胸は24時間の救急対応をしており、手術適応があれば、臨時の急患対応で胸腔鏡手術を行い、早期退院が可能です。また、胸膜炎や膿胸も救急で胸腔ドレナージあるいは胸腔鏡手術を行い対応しています。
 
  7)巨大肺嚢胞、慢性肺気腫に対する治療
  低肺機能である巨大肺嚢胞や慢性肺気腫患者には適応を慎重に判断しながら、胸腔鏡下巨大嚢胞切除術や肺容量減少手術を行い、肺機能の回復やQOL改善を目指しています。
 
  8 縦隔腫瘍に対する手術
  縦隔腫瘍は多彩であり、悪性度、発生部位や大きさに応じて、胸腔鏡を積極的に使用して手術を行っています。また元来、縦隔腫瘍は診断が困難なため、胸腔鏡のみならず縦隔鏡を有効に使用することで病理学的確定診断をえて、適切な治療を早期に開始できるように配慮しています。
 
  9)縦隔腫瘍に対するロボット支援手術
   縦隔腫瘍は肺癌手術同様にロボット支援手術のよい適応です。特に胸腺腫を代表とした前縦隔腫瘍はアプローチの難しい部位に存在しているため、通常の胸腔鏡手術よりもロボット支援手術の方が容易に手術可能な場合もあります。
  現時点では保険適応のない手術ですので、詳細は当院の医療サービス課もしくは当科へ直接お問い合わせください。
 
  10)重症筋無力症に対する手術 
  重症筋無力症は拡大胸腺摘出術の適応があります。しばしば胸腺腫を合併することから手術が重要な疾患です。低侵襲手術である胸腔鏡手術を積極的に行っており、術後経過が良好です。脳神経内科と共同診療を行うと同時に、最近は小児例にも積極的に手術を行っており、脳神経小児科とも連携をとっています。
 
  11)重症筋無力症に対するロボット支援手術  
  当科では平成231月に本邦初となる重症筋無力症に対するロボット支援胸腔鏡下拡大胸腺摘出術を行いました。現在まで3例の手術を行い、良好な経過を得ています。胸腔鏡手術と比較しても、小さな傷、少ない痛み、早い回復が期待されています。欧米ではすでに1000例以上の実績があり、最近ではロボット支援手術をした場合は重症筋無力症の寛解率がよいというデータもあり、今後の検討が期待されています。