竹内隆先生

発生生物学 教授

竹内 隆

鳥取大学医学部 生命科学科
生体情報機能学講座 発生生物学分野(取材時:生体情報学分野) 教授

※以下の掲載内容は、取材時の研究内容等に基づき掲載されております。

研究内容

  • 哺乳類心筋細胞の増殖停止とその維持のメカニズム
  • 哺乳類の心臓再生を不可能とするメカニズムの解明とその解除
  • イモリの心臓再生を可能とするメカニズムおよび様々な組織を再生できる機構の解明

再生医療に結び付ける研究には様々な研究があるが、心臓再生について着目し、「人間もイモリのように再生できないか?」という疑問から再生医療につながる研究に取り組んでいる竹内研究室を訪ねてみた。

心臓までも再生できるイモリ

研究室には、小さいイモリから大きいイモリまで何種類ものイモリが何百匹もいた。そのほとんどがイベリアトゲイモリである。つい先日、第一回イベリアトゲイモリ研究集会が鳥取大学医学部で開催され、全国からイモリ研究者が集まっていた。やはり、研究者が注目している点は、イモリが多くの組織を再生できる点である。イモリは手足のみならず、網膜、脳、心臓などヒトでは不可能な組織を再生できる。特に心臓の再生では、ヒトでは起こらない心筋細胞の再増殖が起こる。

哺乳類の心筋細胞が増えない仕組み−心臓を再生できない仕組みーを発見!

哺乳類の心筋細胞は胎生期に活発に分裂して増殖するが、生後では増殖はストップする。また、心筋梗塞等の発症により心筋細胞が死んだ場合、その部分は再生しない。しかし、イモリではダメージを受けても心筋細胞が分裂し、増殖することによって再生する。
竹内教授は、マウスとイモリを比較することにより、その違いを研究してきた。そして、大人のマウスでは蛋白質「cyclin D1」の生成を強力に抑え続けることによって心筋細胞の増殖を停めることを発見した。この研究内容は、米国の生化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオケミストリー」の2014年6月27日号に論文掲載された。イモリではダメージを受けたときにこのcyclin D1がつくられ、心臓を再生する。マウスとイモリの違いは何か?その違いのメカニズムを詳細に調べることで、今後、画期的な再生医療の開発に発展することが期待される。

受験生へのメッセージ

日々、研究に取り組む竹内教授から受験生へメッセージがある。
「たった一つの細胞から私たちの体はどのようにしてつくられるのでしょうか?なぜ、私たちの体の多くの組織は再生できないのでしょうか?私はこの不思議に魅せられて研究者になり、この不思議を解き明かそうと研究を続けています。研究の道は決して平坦ではありません。しかし、その発見の喜びは無上のもので、大きな真理の解明はとても大きな成果を社会にもたらします。生命科学科では、このような根本的な生命科学の謎の解明や革新的な医療の発展を目指すあなたを待っています。そして、一緒に生命科学の未踏峰を登りましょう。頂上には誰も見たことがない景色が待っています。」

取材班からの一言

取材に伺った時、実験室にはたくさんのイモリがおり、初めて間近でイモリを見せてもらった。実のところ、最初は、あまり良いイメージがなかったイモリだが、何度か見ているうちにだんだん可愛く見えてきたのは竹内教授の熱い思いからでしょうか。