当科でのIVRに関する研究

椎体腫瘍術前塞栓時に用いるsubtraction CTAに関する研究

椎体に発生・転移した腫瘍による脊髄圧迫あるいは切迫状態を生じた場合、整形外科医により椎体固定術が行われることがありますが、術中出血量を減少させるために当科へ椎体腫瘍術前塞栓を依頼されることがあります。栄養血管分岐が疑われる血管の選択後にCTAを撮影していますが、造骨性転移や骨棘形成の強い症例では、造影効果と骨硬化が判別しにくく、その血管が本当に腫瘍に関与しているか苦慮していました。Subtraction CTA(単純CTとCTAで差分を作成し、濃染域のみを描出する)を作成することで、濃染域と骨硬化を判別でき、過不足のない塞栓を行えることが期待されます。これらの有効性と安全性について臨床的に研究しています。

写真 | CTA
写真 | subtraction CTA
       

compressing法を用いたバスキュラープラグ塞栓術に関する研究

バスキュラープラグは個体の永久塞栓物質の一つですが、device長が長いため適応が制限される問題点があります。バスキュラープラグを圧縮留置する方法(compressing法)を用いることによりlanding zoneが短い症例にも適応可能となりますが、安全性は証明されておらず、基礎的、臨床的検討を行いました。

腹部ステントグラフト内挿術後のタイプⅡエンドリークに対するIVR:
技術的側面と予後についての後方視的研究

腹部ステントグラフト内挿術は有効な治療法であることが示されてきていますが、一部は治療後に瘤径拡大を来します。特にタイプⅡエンドリーク(T2EL)による瘤径増大は治療の耐久性を損なうため、IVRにより瘤径増大を防ぐ試みがなされています。後方視的にT2ELに対するIVRの成功率、特に技術的側面が予後に与える影響を重要課題として検証しています。

バルーン補助下コイル塞栓術(balloon-assisted coil embolization: BACE)に対する研究

コイル塞栓術は出血時の止血術としてのみならず、血流改変術としても重要な治療法ですが、“狙った場所”に“短区間”で“密”に金属コイルを留置することが安全で確実な効果を得るための鍵となります。バルーンカテーテルを用いて血流を遮断しつつ、カテーテルのkick-back現象を制御できるBACEは、この理想的なコイル塞栓を容易にします。m-BACE(マイクロバルーンを用いたBACE)は血管の末梢枝で行うことができ、D-BACE(dual-BACE:バルーン・マイクロバルーン間で行うBACE)はlanding zoneが短い症例において効果を発揮します。これらの効果と安全性について基礎的および臨床的研究を行いました。

バスキュラープラグを用いた胃静脈瘤塞栓術に対する研究

孤立性胃静脈瘤に対するIVRとしてはバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が一般的に行われ、2018年より保険収載となっていますが、逆行性アプローチであるが故に難易度が高く、手技を完遂できない症例も経験されています。2013年に韓国から発表されたPARTO(plug-assisted retrograde transvenous obliteration:バスキュラープラグを用いた胃静脈瘤塞栓術)はB-RTOの変法ですが、手技が簡便で結果も良好であり、当科でも取り入れています。B-RTOとの治療成績についての比較はほとんど行われておらず、研究課題として取り組んでいます。

食道気管支瘻に対する食道ステント療法の基礎的検討

食道気管瘻に対する治療法として食道ステント留置術がありますが、狭窄を伴わない瘻孔形成症例では治療が難渋します。狭窄を伴わない食道気管瘻に対する食道ステント留置術の基礎的検討を行いました。

下部消化管動脈性出血に対するNBCAを用いた塞栓術に関する研究

液体永久塞栓物質であるN-butyle-2-cyanoacrylate(NBCA)を用いた塞栓術(NBCA塞栓術)は液体の塞栓物質の一つであり、吻合枝も含めて塞栓できるため、止血率が高く、再出血率も低いです。しかし、下部消化管では吻合枝が乏しく、安全性の面で危惧される側面があります。いかにNBCA塞栓術を行えば、安全に施行可能か検証しました。