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DNAのメチル化とはどのようなことですか?
 一般に、哺乳類の場合に、DNAのメチル化といえば、5'- CG -3' (CpGと書くこともあります。)という塩基配列中のC(シトシン)という塩基に生じるメチル化のことです。シトシンの5位の炭素についている水素がメチル基(CH3)に置き換わることをメチル化、その逆を脱メチル化といいます。(これ以外の場所や塩基に生じるメチル化もありますが、そのようなメチル化を持つ塩基は異常な障害塩基として除去されます。)
 ある領域のCpG配列の多くにメチル化が生じている状態を高メチル化、逆を低メチル化状態といいます。

DNAにメチル化が生じるとどうなるのですか?
 DNAのメチル化修飾によって、直接または間接的にDNAとタンパク質との結合を調節することができます。

  1. 直接的な調節: DNAの塩基配列を識別してDNAに結合するタンパク質の中には、識別配列にCpG配列を構成するCが含まれており、そのCがメチル化C (mC) に変化した場合に、もはや自分の結合配列だと識別できなくなるものがあります。
  2. 間接的な調節: 核内でDNAはヒストンタンパク質に巻き付いた、遠目に見れば数珠のような状態で存在しています (数珠は珠に糸が巻き付いているわけではありませんが、この際そこのところは気にしないで下さい) が、その巻き付き方には様々な程度があると考えられています。DNAが珠に強く巻き付いて、隣の珠との間隔もあまりない場合、さらにそのような場所を好んで集まってくる特有のタンパク質がべたべたくっついている場合を考えてみて下さい。DNAの塩基配列を識別してDNAに結合するタンパク質は、自分の結合配列を識別しにくいし、結合もしにくいと考えられますよね。DNAのメチル化が多く生じた (高メチル化) DNA領域は、このような構造に変化すると考えられています。

 DNAがメチル化した結果何がおこるのかは、どのような働きをするDNA領域がメチル化したのかということによって変わってきます。遺伝情報の読み出しを妨げることもありますし、逆に促進することもあるのです。様々なDNA領域で本来と異なるメチル化の状態が生じることによって細胞の機能に異常が生じるのは、このような変化を介して遺伝情報が適切に読み出されなくなるためだと考えられます。

DNAに結合するタンパク質は何をしているのですか?
 様々な役割を持ったものが存在します。遺伝情報の読み出しを調節するようなタンパク質にはDNAの塩基配列を識別できるタンパク質も多く、それらは長いDNA分子の決まった位置に結合します。DNAに結合することで、それぞれのタンパク質に特有の機能を発揮することになります。タンパク質によっては、遺伝子の情報の読み出しを開始させたり、逆に停止させたりします。遺伝子と遺伝子の境界を決める働きをするものもあれば、その働きを失わせるものもあります。それらを組み合わせて用いることによって、組織や細胞の種類に独特の、異なった種類の遺伝情報の読み出しを制御しています。

遺伝情報の読み出しとはどういうことなのですか?
 細胞の中に存在する遺伝情報は、そのままでは蓄えられている情報に過ぎません。遺伝子の情報を元にタンパク質を合成するためには、先ず蓄えられた遺伝情報の中から必要な情報を選んで読み出す必要があるのです。(この過程を転写といいます。)
 

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