遺伝情報が記録されたDNAは細胞の中で二重らせんのひもとして単独に存在するのではなく、種々のタンパク質と結びつき、核のなかで複雑に折りたたまれた構造をとっている。これが染色体と呼ばれるもので、細くきわめて長いDNAを保護し、細胞分裂の際に効率良く複製と分配を行うための、重要な構造体である。さらに、その中に含まれる遺伝子が、適切な時期に正確な量を発現するためにも、染色体は重要な働きを有している。

  ヒト染色体は、22種類2本ずつからなる常染色体と1組の性染色体(XとY染色体)の計46本からなる。男性はXY、女性はXXの組み合わせをもつ。染色体には、細胞分裂の際にその分裂に重要な動原体や、末端を保護するテロメア配列などの特殊な構造も有する。

  ゲノムプロジェクトが完了した現在、ほぼ全ての遺伝子の配列が解読され、多くの疾患と遺伝子の異常との関係が明らかにされてきた。しかしながら、それら遺伝子の発現が、どのように制御され機能しているかは、染色体の構造に基づいて解明する必要がある。また、単独の遺伝子を調べるだけでなく、染色体上で群をなす複数の遺伝子を寄せ集めた状態で解析する必要性も唱えられている。それゆえ染色体工学はこれらのポストゲノム研究を発展させるためのきわめて重要な技術である。
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