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染色体導入技術とゲノム編集技術の融合により、ダウン症候群モデル細胞作製に成功

ダウン症候群は21番染色体トリソミーにより引き起こされる先天性疾患であり、白血病、心奇形、精神発達遅滞など多様な表現型を示す。中でも急性巨核芽球性白血病(acute megakaryoblastic leukemia: AMKL)は非ダウン症児に比べ、ダウン症児に約500倍も高頻度に見られる病態である。ダウン症児に見られるAMKL(DS-AMKL)には、X染色体上の転写因子GATA1遺伝子に変異が見られ、GATA1遺伝子のN末が欠損したGATA1sタンパク質が発現している。また、非ダウン症児のAMKLではGATA1変異が見られないことから、トリソミー21とGATA1変異がDS-AMKL発症の必要条件であると考えられている。このDS-AMKLの原因解明と有効な治療法・治療薬開発のためにはダウン症候群モデル細胞の作製が必要不可欠である。
本研究では血球系細胞を含め様々な細胞に分化できるヒト胚性幹(ES)細胞に鳥取大学が開発した染色体導入技術を用いて、ヒト21番染色体を導入し、人工的にダウン症(トリソミー21)モデル細胞を作製することに成功した。さらに、遺伝子に効率的に変異を導入することができるゲノム編集技術を用いて、GATA1遺伝子に変異を導入することで、DS-AMKLに見られるGATA1sタンパク質が高発現する細胞を作製した。これらの細胞を血球系細胞に分化誘導すると、GATA1sにより赤血球分化が抑制され、トリソミー21とGATA1sにより協調的に巨核球分化に影響を与えることが明かとなった。
本研究で作製された細胞は前白血病状態であり、DS-AMKLになるためにはさらなる遺伝子変異が必要であると考えられているので、「そのような遺伝子変異は何か?」、「またヒト21番上の原因遺伝子は何か?」、を今後研究する予定である。本研究で作製されたダウン症モデルES細胞は患者由来細胞等を用いた研究では不可能であったDS-AMKLの症状に対応する原因遺伝子の解明、さらには治療薬開発のための新たなツールとなることが期待される。
なお、本研究は基盤研究S及び地域イノベーション戦略支援プラグラムの支援のもと、広島大学、東京大学医科学研究所、東北大学、弘前大学、京都大学との共同研究体制によって行われた。

 

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